頭痛の診療には頭痛の経過や頭痛の影響因子、治療効果を記録した頭痛ダイアリーがとても大切です。
ここにご紹介するのは小児・思春期の頭痛記録におすすめの頭痛ダイアリーです。添付のファイルをコピーしてご使用ください。
記入例と頭痛ダイアリーの記入方法をお示しします。
頭痛は、本人以外には分かりにくいので、できる範囲内で記入して、次の診察の時、持ってきてください。
小学校高学年以上は、自分で記入してください。
記入のしかた
1.頭痛の様子
いつ始まっていつ終わったか(線で描く)
どのくらいの痛みだったか(ふつう強くて寝込むほどは5 以上、生活できるのは5 以下)
頭痛の前ぶれ(目の症状など)、きっかけ(低気圧、光、寝不足、食べ物など)
頭痛以外の症状(吐き気、嘔吐、光、音、臭いに敏感になるなど)
2.使ったお薬
☆ブルフェン®→ブ ☆カロナール®→カ ☆バファリン®→バ ☆ロキソニン®→ロ ☆イミグラン®錠→イT ☆イミグラン®点鼻液→イN ☆ゾーミッグ®→ゾ☆レルパックス®→レ ☆マクサルト®→マ ☆アマージ®→アその他( )
3.学校や家での生活の様子
おけいこ、塾、テスト、けんかやいじめ、ストレスに感じることなど何でも書いてください。睡眠時間も記入してください。
♥ できるだけ毎日、その日のうちに記入しましょう!
筑波学園病院 小児・思春期頭痛外来 藤田光江
1.子どもにも、片頭痛と緊張型頭痛という病気(一次性頭痛)があります。各国の文献からの学校基盤の頭痛有病率は、片頭痛10.4%(わが国の中学生では4.8%)、緊張型頭痛13.2%です。
2.片頭痛は強い頭痛で、学校で起きる可能性があるので、病気の知識とその対応を知っておく必要があります。
3.小学校高学年から中学の思春期には、学校や家庭における心理社会的問題が関与し、頭痛が慢性化することがあります。この場合、片頭痛のほか、慢性緊張型頭痛が加わり、難治性で、不登校に発展する可能性があります。
(執筆者 藤田光江氏)
授業中頭痛が始まったので、担任に言うと、保健室に行くよういわれた。そこで、持参の鎮痛薬(ブルフェン®)を飲み、ベッドで寝かせてもらった。1時間半くらいで目が覚め、頭痛が軽くなったので、教室に戻り、早退はしなくてすんだ。1年の担任が、2年の担任に、本児が片頭痛をもっていることと、発作時の対応を申し送ってくれていたと言い、母親は大変ありがたかったと言っている(頭痛にかかわらず、慢性疾患をもつ子への対応は、学年が変わってもその子の情報として引き継いでほしい)。
野球チームに入り、練習するようになって、頭痛が増えたので、病院を受診し、片頭痛と診断された。片頭痛という病名と、雨や曇りの日より、お天気の日に頭痛が多いと母親が担任に伝えた。担任がたまたま片頭痛をもっていて理解があり、本児の座席を窓側から廊下側に移したところ、学校での頭痛はかなり減り、学校生活がしやすくなった(子どもの病気の情報を正しく受け止め、担任の機転で席替えなどの対応した点は、とてもありがたかった)。
担任に頭が痛いと言ったら、保健室に行くよう言われた。養護教諭は、体温計で熱を計って、36.5℃だったので、熱がないから大丈夫と言い、教室に戻るようにと言った。頭痛はだんだん強くなって、教室で吐いてしまい、保護者に連絡後、早退した。養護教諭は、風邪以外で、子どもに頭痛があるのは知らず、気持ちの問題と思っていた(片頭痛は強い頭痛ですが、もちろん平熱です。静かな暗い部屋で眠ると治る場合もあります。片頭痛発作には時に嘔吐を伴うこともあるので、その場合も、対応は保健室ですべきでしょう)。
片頭痛発作に嘔吐を伴うことが多いので、主治医から片頭痛治療薬の点鼻液(イミグラン点鼻液®)が処方され、母親から学校側に片頭痛の病名と発作時の対応を頼んである。しかし、本児は内気で授業中、担任に頭痛があると言えないため、頭痛が始まったら、こっそり机の下に隠れて点鼻液を使っている。飲み薬は水が必要で、先生や級友に気付かれるので、かえって点鼻液の方が使いやすいという。ある日、点鼻液を忘れていき、頭痛が起ってしまった。授業が終わるまで頭痛をがまんして(顔は何気なく装うので担任は気付かず)、耐えきれなくなってから母親が呼ばれた。帰りの車の中では、本当に辛そうで、嘔吐もした(学校に片頭痛であると伝えてあっても、頭痛があることを言いだせない子どももいることを分かってほしい)。
片頭痛と診断され、片頭痛治療薬(マクサルト®)を学校に持参している。授業中、見ようとするところがぼけ回りが光る前兆が現れた後、ズキンズキンと強い頭痛が起った。担任に言い、保健室へ行って、薬は飲めたが、気持ちが悪くなって動けなくなり、ベッドに寝かせてもらった。学校には1時間ルールといって保健室には原則1時間しかいられず(教室にもどるか保護者に連絡し、帰宅するかを選ぶ)、一番辛い時で動けないと不安だった。丁度、保護者に連絡がつかず、2時間ほど寝かせてもらい、帰りの会にでることができた(片頭痛の子どもは、1時間以上は頭痛が続くので、1時間ルールにかかわらず、本人の症状に会わせて対応してほしい)。
小学校から片頭痛発作が月1回くらいあったが、中学1年の5月の連休あけから強い頭痛を連日訴え、欠席が多くなった。朝起きられず、小児科では起立性調節障害と診断された。昼近くになると調子はよくなるが、遅刻しては登校できない。たまに登校しても保健室から動けず、午前中で帰宅した。夏休みあけからは、1日中頭痛を訴え、全く登校できなくなり、昼夜逆転の生活になっている(学校に行けない理由となる身体症状は、中学生では腹痛より頭痛が多い。学校、医療機関での思春期の心身を考慮した対応が望ましい)。
中学3年が引退し、部活動の部長になった頃から、毎日頭痛を訴え、保健室に行くことが多くなった。養護教諭は、何か心配事があると感じ、保健室の仕事を手伝ってもらいながら、それとなく聞いてみた。部活動は、1年生は大人数の上、自己主張する子が多く、まとめられないこと、家庭でも、最近両親のいさかいが多く、長女の本人は辛い思いをしていることが分かった。頭痛は続き、欠席も多いが、時々保健室で話を聞いてもらいながら、何とか学校生活は続けている(学校で、養護教諭、教師、スクールカウンセラーなど、心を開いて話せる大人がいたら、何
1)藤田光江:片頭痛(小児) MyMed医学電子教科書
http://www.mymed.jp/di/vbf.html
2)藤田光江:日本小児神経学会 小児神経Q&Aコーナー;Q35:小児の頭痛
http://child-neuro-jp.org/visitor/qa2/a35.html
3)寺本純:慢性疾患をもつ子どもと学校教育 頭痛に悩む子どもと学校生活. 教育と医学 58:988-996, 2010.
4)藤田光江:学校医に必要とされる頭痛診療. Headache Clinical & Science 2:42-47, 2011.